普段、私たちが「コレステロール値」という単語を使用する場合、採血をして、その血液中のコレステロールの濃度を測定した数値のことを指しています。コレステロールは、主に動脈硬化を促進する悪玉のLDLと、動脈壁にへばりついた余分な脂質を回収する善玉のHDLが含まれています。LDLもHDLも食後すぐには上昇しません

動脈硬化で狭くなった血管

一方、血液中の中性脂肪は食事よって大きく変化します。食事との関係を無視して検査をしても、正しい検査結果を得ることはできません。中性脂肪はほとんど上昇しない、コレステロール値だけが高い人の場合、必ずしも空腹時の採血は必要ありません。しかし、一般的には朝食を抜いた午前中に採血を行います。

食事による影響を極力抑えるため、検査前12時間は絶食状態が望ましいので、検査前夜の21時以降は食事はとらないようにしましょう。また、アルコールも中性脂肪値に影響するので控えるようにします。前の晩に脂っこい食事を食べて翌朝まで影響することがあります。

なお、中性脂肪値を肥満度を表す数値と解釈している人が少なくないように思えます。確かに肥満気味の人は血中中性脂肪値は高い傾向にありますが、肥満度は慎重に対してどの程度太っているかを示すもので、血中中性脂肪値のことではありません。

血液中の脂質を総称して「血清脂質」といい、健診や人間ドックの一般的な血液検査では、「総コレステロール」「中性脂肪(トリグリセライド)」「HDLコレステロール」「LDLコレステロール」を調べます。数値が基準値を超えている場合、動脈硬化のリスクが高まります。

いずれの基準値も持病がない健康な人を対象としており、既に高血圧、糖尿病、狭心症などの病気がある人、あるいは喫煙年数が長い人では目標とする数値は厳しくなります。まれにコレステロールや中性脂肪の値がかなり低い人がいますが、体質的な問題なので特に心配する必要はありません。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や肝硬変でもコレステロール値は低下しますが、まず病気そのものの症状が現れますので、元気な場合は心配する必要はありません。

動脈硬化は脂質異常症だけでなく、高血圧、糖尿病、喫煙などでも起こります。動脈硬化とは文字通り動脈が硬くなることを意味しており、実際に動脈硬化を起こした動脈は触ると硬いのがハッキリとわかります。しかし、硬いこと自体が健康に悪いのではなく、動脈硬化を起こした動脈の内腔が狭くなることが危険なのです。

狭くなった動脈が詰まった場合、それが心臓であれば虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳ならば脳梗塞を起こします。いずれも詰まった先の組織に酸素を供給できなくなるため、細胞が壊死してしまう怖い病気です。

高血圧は脳梗塞の危険因子のため食事・薬物療法が重要

脳梗塞は、血圧が高く、動脈硬化が進行し、喫煙習慣のある人ほど発症しやすくなっており、高血圧、動脈硬化、喫煙の三大リスクのほか、脂質異常症、糖尿病 、肥満、運動不足なども危険因子に挙げられます。これらの危険因子は、互いに影響しあうことで症状を悪化させるので、健康診断を定期的に受けて早めの対策を心掛けることが肝要です。

健診の必須項目の一つ

私たちの体には、常時、体重の約8%の量の血液が循環しています。全身に血液を送るポンプの役割を果たしているのが心臓ですが、狭い血管に圧力がかかった血液が流れる時に血管を押し広げようとする圧力のことを「血圧」といいます。

血圧は健康診断や病気の時に測定されますが、測定値には、心臓が収縮して血液を動脈に送り出したときの圧力である「最高血圧」(収縮期血圧)と、心臓が拡張して血液を呼び込んだ時の圧力である「最低血圧」(拡張期血圧)の2つがあり、最高血圧が140mmHg以上で、最低血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。

健康診断で医師から血圧が高いと指摘された人は、血管に常に高い圧力がかかっており、底に流れる血液が血管壁を傷つけてしまいやすく、血圧コントロールを上手に行わないまま放置していると、血管壁の損傷が進行し、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害をはじめ、心臓病、腎臓病といったさまざまな病気を引き起こすきっかけとなります。

すでに高血圧と診断された人は、医師の指示によって降圧剤の服用で血圧を目標値内にコントロールし、食生活では低脂肪・低塩食を心がけ、適度な運動を行っているはずです。境界域の人も高血圧の予備軍といえますので、食塩の摂取量、アルコール、喫煙などの高血圧の危険因子の有無をチェックし、生活習慣の改善に取り組む必要があります。

健康診断や医師の前で血圧を測定すると、緊張して平常時よりも数値が高くなる人、あるいは逆に低い数値が出てしまう人もいます。そのため、家庭用の自動血圧計を備え、毎日決まった時間に測定を行い、血圧の変動を記録するようにしておくと賢明です。

動脈硬化を招く中性脂肪の摂り過ぎに注意

脂質の一種である中性脂肪(トリグリセライド)は、コレステロールと同様に生命活動のエネルギー源として重要な役割を果たしている栄養素です。

ファストフードの摂り過ぎに注意

この中性脂肪は、エネルギーとして即使用できる遊離脂肪酸と呼ばれる脂質が集まってできており、通常は体内に蓄えられています。そして、運動を行ったり、食事からのエネルギー摂取量が不足したときに、遊離脂肪酸に分解され、エネルギーとして使用されます。

中性脂肪には、食べ物に含まれて直接体内に入るものと、炭水化物やタンパク質、アルコールなどを原料として肝臓で作られるものがあります。体内の中性脂肪は、運動などで消費されますが、運動不足や食べすぎなどの生活習慣を続けると、皮下に運ばれて蓄積され、やがて肥満となります。皮下だけでなく血中の中性脂肪も増えると、様々な障害が現れます。

中性脂肪は、コレステロールと同様に、リポタンパクとなって血液中に入り込み、全身に運ばれていきます。従来、中性脂肪と動脈硬化の因果関係は明確ではありませんでしたが、今日では中性脂肪がコレステロールや動脈硬化にかかわりあがるという事実が明らかになっています。

中性脂肪の数値が150mg/dl以上になると、善玉のHDLコレステロールが減少します。また、血液が固まってできる血栓は、フィブリノーゲンや組織プラスミノゲーン活性化阻止因子という物質が原因ですが、中性脂肪の数値が高いと、これらが増えることになります。

中性脂肪が高いと、血中のコレステロールにも、動脈硬化にも影響を与えますが、中性脂肪とコレステロールは一緒に上昇するとは限りません。脂質異常症の患者さんで、中性脂肪とコレステロールが同上に上昇するケースは1/4くらいです。脂質異常症には、食事や遺伝など様々なものに影響を受けており、症状はナニに影響されているかによって異なるのです。